Hacozy Spaceとは?実寸大の宇宙をブラウザで旅できる3D宇宙アプリの使い方
田村 直祈・公開 2026-10-19
Hacozy Space(ハコジー・スペース)は、太陽系の惑星から約11万個の恒星、約6,400個の系外惑星、天の川銀河の中心にあるブラックホールまでを、実際の大きさ・距離・現在の位置のまま3Dで飛び回れる無料のブラウザアプリです。インストール不要で https://www.hacozy.com/space/ を開けばパソコンでもスマホでも使え、日本語の音声つきツアーで宇宙のしくみを見ながら学べます。
この記事の要点
- NASAやJPLなどの公開データをもとに、惑星・衛星・小惑星・ISS・系外惑星・銀河を「いま、本当にある場所」に置いた3D宇宙を、ブラウザだけで旅できます。
- アポロ11号の旅、ブラックホールへの落下、日食のしくみなど7本の音声つきツアーと、宇宙を移動しながら日時を進めたり戻したりできるタイムマシンは、アカウントなしで無料で使えます。
- 声で質問できるAIガイド、4K動画の書き出し、生徒の画面を連動させる授業モードはHacozyプレミアムの機能であり、星座観察や天体観測の計画には別のツールのほうが向いています。
Hacozy Spaceとは何か:本物のデータで作った、縮尺を変えない宇宙
Hacozy Spaceは、宇宙を「実寸のまま」体験できる3Dアプリです。2026年10月より https://www.hacozy.com/space/ にて公開しています。多くの宇宙図鑑や教材では、惑星を見やすくするために大きさや距離を縮めて描いていますが、Hacozy Spaceでは縮尺を変えません。地球から月までの約38万kmという距離や、太陽からの距離、恒星の大きさなどを、すべて実際の比率で配置しています。そのため、地球から少し離れるだけで惑星が点になり、宇宙がどれほど空っぽで広大であるかを、図ではなく自らの移動を通じて体感できます。
天体の位置も「いまこの瞬間」のものを再現しています。惑星については、JPL(NASAジェット推進研究所)が公開している軌道要素をもとに、アプリを開いた時刻の位置を計算しています。国際宇宙ステーション(ISS)は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が公開する最新の軌道要素から、地球のどの上空を飛んでいるかをリアルタイムで表示します。さらに、地球の昼と夜の境界線、木星の縞の向き、オーロラが発生している場所なども、現在の状態に合わせて描画されます。
Hacozyは、これまで英語でしか読めなかった一次資料を日本語の学びに変えることを目指しており、Hacozy Spaceはその理念を宇宙の分野に広げたものです。NASAをはじめとする各国の宇宙機関が公開している観測データを、日本語のインターフェースと音声解説によって、誰でも気軽に触れられる形にしています。
どこへ行けるのか:太陽系から系外惑星、銀河中心のブラックホールまで
移動できる範囲は、地球の低軌道から隣の銀河まで広がっています。主な行き先と、その基となっているデータは以下のとおりです。
太陽系内では、8つの惑星と冥王星に加え、イオ、エウロパ、タイタン、エンケラドゥスなど13個の衛星を訪れることができます。これらは探査機が撮影した表面の地図(米国地質調査所USGSの全球モザイク)を用いて再現されています。土星の環は、近づくと15cmから6mほどの氷の粒の集まりとして描画され、環の中に入り込むことも可能です。小惑星については、はやぶさ2が訪れたリュウグウ、はやぶさのイトカワ、OSIRIS-RExのベンヌなど13個を、探査で得られた実際の形状モデルで表示します。また、2029年4月に地球へ約3万8千kmまで接近するアポフィスの軌道も、JPLの予測どおりに再現しています。
太陽系の外に目を向けると、HYGデータベースv4.1に収録されている109,401個の恒星を、実際の位置と明るさで配置しています。ベテルギウスやシリウスへ向かうと、遠くでは点にしか見えなかった星が、近づくにつれて表面の粒状斑や黒点、プロミネンスが確認できる球体へと変わっていきます。NASA系外惑星アーカイブに登録されている約6,400個の系外惑星もすべて訪問可能です。検索窓に「地球型」と入力すると、大きさと受け取る光の量が地球に近い順に候補が表示されます。
さらに遠く、約2万7千光年離れた天の川銀河の中心には、太陽の約430万倍の質量をもつブラックホール「いて座A*」が存在します。ここでは、ブラックホールの周囲で光が曲がる様子を1ピクセルずつ計算して描画しています。銀河の外へ出ると、天の川銀河を俯瞰できるほか、アンドロメダ銀河や大マゼラン雲など近隣の14の銀河を、実際の位置・大きさ・傾きで訪れることができます。
どんなツアーがあるのか:日本語の音声で見る7つの宇宙の旅
どこから見ればよいか迷う方のために、カメラが自動で移動し、日本語のナレーションで解説する7本のツアーを用意しています。ツアー中も画面をドラッグして周囲を見回したり、拡大したりすることができ、手を離すと再びツアーが進行します。
「アポロ11号の旅」では、1969年の打ち上げから月面着陸、そして帰還までをNASAの機体モデルで追いかけます。月へ向かう途中で司令船が月着陸船を引き出すドッキングの場面をスローモーションで観察できるほか、着陸地点である「静かの海」では、クレーターや岩が広がる月面に立つことができます。なお、軌道は実際の主要な出来事の時刻に合うよう計算し直したものであり、飛行記録そのものではありません。
「ブラックホールに落ちたら」では、いて座A*と、その周囲を約16年周期で回る恒星S2を観察したあと、事象の地平面のすぐ近くまで降下していきます。画面上には、強い重力によって時間がどれほど遅れるかも表示されます。「日食のしくみ」では、2027年8月2日の皆既日食を題材に、月の満ち欠けをはじめ、月の影が地球上を横切る様子や、地上から見た皆既の瞬間までを早回しで体験できます。
そのほかにも、太陽系を一周する「太陽系めぐり」、土星の環に飛び込んだあとに極端な環境の系外惑星を7つ訪ねる「奇妙な惑星たち」、リュウグウからアポフィスまでを巡る「小惑星を間近で」、ISSやハッブル宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などを現在の位置で確認する「人工衛星と宇宙望遠鏡」といったツアーがあります。
どうやって使うのか:操作、検索、タイムマシン
使い方は簡単で、ブラウザから https://www.hacozy.com/space/ にアクセスするだけです。インストールやアカウント登録は不要であり、読み込みが完了すればすぐに宇宙の旅を始められます。
基本的な移動操作は以下の3つです。
・検索:画面上部の検索欄に「土星」「ベテルギウス」「ISS」などを入力して選択すると、目的の天体まで自動で移動します。ひらがなや英語での検索にも対応しており、「えうろぱ」と入力しても見つけることができます。
・スクロール(スマホではピンチ操作):前進および後退ができます。操作を続けるほど移動速度が上がり、光速を超えて飛ぶことも可能です。星にカーソルを合わせてスクロールすると、その星に向かって移動します。
・ドラッグ:現在近くにある天体の周囲を回り込むようにして眺めることができます。
画面上の時計はタイムマシンとして機能し、日時を進めたり戻したり、時間の流れを速めたりすることが可能です。これにより、月の満ち欠けを早回しで観察する、2029年のアポフィス接近日に合わせる、日食の瞬間に地球に落ちる影を確認する、といった使い方ができます。また、操作パネルを非表示にして景色だけを全画面で楽しむフォーカスモードも搭載しています。表示言語は日本語と英語に対応しており、ブラウザの設定に合わせて自動的に切り替わります。
各天体へ直接アクセスできるリンクも用意されています。たとえば、https://www.hacozy.com/space/saturn を開くと土星へ、https://www.hacozy.com/space/betelgeuse を開くとベテルギウスへ直接移動します。授業の資料やSNSなどで「この場所を見てほしい」と共有する際に便利です。
無料で何ができ、プレミアムでは何が増えるのか
宇宙空間の移動、天体の検索、日本語音声つきの7本のツアーの視聴、タイムマシンによる日時の変更といった基本機能は、アカウント登録なしで無料でご利用いただけます。
Hacozyプレミアムに登録すると、以下の機能が追加されます。プレミアムプランはHacozy本体と共通となっており、Hacozyのプレミアムコースもあわせて利用可能です。料金についてはアプリ内の案内をご確認ください。
・AIガイド:音声やテキストで話しかけると、目的の場所へ案内し、見えている景色を音声で解説します。「土星の環の中に入りたい」「いまISSはどこ?」のようにリクエストすると、ガイドが自動で移動して案内します。
・4K動画とスクリーンショット:見せたい場面を言葉で伝えると、ガイドがカメラの動きを構成し、4K・フルHD・縦型(9:16)の動画として書き出します。ツアーをナレーションごと動画化することも可能です。
・授業モード:先生の画面に6文字のコードが表示され、生徒がそのリンクを開くと、生徒の画面が先生の操作に連動します。生徒側のアカウント登録は不要です。
すでにiPhoneアプリでHacozyプレミアムに登録されている場合は、同じHacozyアカウントでログインすることで、追加料金なしでHacozy Spaceのプレミアム機能をご利用いただけます。
動作環境と、Hacozy Spaceが向かない人
Hacozy Spaceは、WebGL 2に対応したブラウザで動作します。近年のパソコン用Chrome、Safari、Edge、Firefoxのほか、iPhoneやAndroidのブラウザでも利用可能です。画質は「フル」(8K画像)と「ライト」(2K画像)から選択でき、スマートフォンやタブレット、グラフィック性能が高くないパソコンでは、読み込み時に「ライト」を選択することをおすすめします。なお、本アプリはiPhone版のHacozyアプリ内には組み込まれておらず、ブラウザからアクセスして使用します。
一方で、以下のような目的には、ほかのツールのほうが適しています。
・今夜の空にどの星座が見えるかを調べたい:Hacozy Spaceは宇宙空間を移動するためのアプリであり、地上から見上げた星空の観察ガイドではありません。星座の確認や天体観測の計画には、Stellarium Webなどのプラネタリウムソフトが適しています。
・探査機のミッションを公式の解説つきで詳しく追いたい:NASAが提供するNASA's Eyesを利用すれば、探査機の飛行を公式データに基づいて詳細に追うことができます(英語のみ)。
・天体の衝突や重力を自分で操作して実験したい:Hacozy Spaceは実際の宇宙を再現するものであり、惑星を動かしたり衝突させたりする物理シミュレーターではありません。
・古いパソコンで使いたい:WebGL 2に対応していないブラウザや端末では動作しません。
また、系外惑星の表面については撮影された画像が存在しないため、大きさと温度から推定した外観で描画しています。系外惑星の軌道は円軌道として近似しており、恒星の固有運動(長い年月をかけた星の移動)も表現していません。
本記事はHacozyが制作しています。記載した機能・提供条件は2026年10月時点のものであり、変更される場合があります。
主なデータの出典:JPL Horizons(https://ssd.jpl.nasa.gov/horizons/)、NASA Exoplanet Archive(https://exoplanetarchive.ipac.caltech.edu/)、HYG Database v4.1(https://github.com/astronexus/HYG-Database)、CelesTrak(https://celestrak.org/)、NOAA SWPC(https://www.swpc.noaa.gov/)、いて座A*の質量はGRAVITY Collaboration (2022)。
| ツール | 主な視点 | 動作環境 | 日本語の音声解説 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| Hacozy Space | 宇宙空間を自由に移動(太陽系〜恒星〜系外惑星〜銀河) | ブラウザ(パソコン・スマホ) | あり(7本のツアー) | 実寸の宇宙を旅しながら、宇宙のしくみを日本語で学ぶ |
| NASA's Eyes on the Solar System | 宇宙空間を移動(主に太陽系と探査機) | ブラウザ | なし(英語) | NASAの探査機ミッションを公式データで追う |
| Stellarium Web | 地上から見上げた星空 | ブラウザ | なし | 今夜見える星座や惑星を調べ、天体観測を計画する |
| Celestia | 宇宙空間を自由に移動 | パソコン用ソフト(インストールが必要) | なし | 追加データを入れて、自分好みの宇宙を細かく作り込む |
よくある質問
Hacozy Spaceは無料ですか?
宇宙空間の移動、天体の検索、7本の音声つきツアーの視聴、タイムマシンによる日時の変更といった基本機能は、アカウント登録なしで無料でご利用いただけます。AIガイド、4K動画の書き出し、授業モードはHacozyプレミアムの機能となります。
スマホで使うと、データ通信量はどのくらいかかりますか?
最初の読み込みはおよそ15MBで、それが終われば宇宙を飛び始められます。画質を「フル」にしている場合は、近づいた天体の高解像度の画像をそのつど追加で読み込むため、多くの天体を訪れるほど通信量が増えます。通信量を抑えたいときは「ライト」を選んでください。
ブラックホールの見た目は本物に近いのですか?
いて座A*の周りの光の曲がり方は、一般相対性理論の式にもとづいて画面の1ピクセルごとに計算しています。ブラックホールの影、そのふちを回る光の輪、手前に向かって動くガスほど明るく見える偏りも再現しており、イベント・ホライズン・テレスコープが2022年に公開したいて座A*の画像と同じく、輪の片側が明るく見えます。ただし、周囲のガスの具体的な形や、周りの約4万個の星の配置は観測ではなく推定です。
動きが重いときはどうすればいいですか?
画面右上の「•••」メニューから、画質を「ライト」に切り替えてください。画像が2K解像度になり、グラフィックメモリの使用量が大幅に軽減されます。それでも動作が重い場合は、お使いのブラウザがWebGL 2に対応しているかをご確認ください。
Hacozy Spaceで見た宇宙のしくみを、もっと詳しく学ぶには?
Hacozyのコース『物理のすべて』では、月が地球に落ち続けている理由(万有引力と軌道)や、速く動くほど時間が遅れる理由(相対性理論)などを、数式を使わずに図解とクイズで学べます。Hacozy Spaceで見た景色の「なぜ」を、レッスンを通じて言葉で説明できるようになります。