AIは毎回、会話を最初から読み直す
「AI時代の情報管理入門」のレッスン 2 / 9・約5分
同じチャットで前に書いた名前が、なぜ今の返答に出てくるのか。会話の読み直し、メモリ、学習の3つを分けて見る。
このレッスンで学ぶこと
- AIの記憶の正体
レッスンの内容
書いていない名前が出てくる
ChatGPTに上司の佐藤さんの愚痴を書いた。3往復あとで名前を伏せて「謝罪メールを作って」と頼むと、返答に「佐藤さん」と出てきます。
今の質問には書いていないのに、なぜでしょうか。
返答のたびに読み直す
AIのモデルは会話を覚えていません。返答のたびにアプリがこれまでのやり取りをまとめて渡し、モデルが読み直しているのです。
送るたびに、何が渡る?
「送る」を3回押し、AIに渡る吹き出しの数を見ましょう。次に「新しい会話」も試します。
この束がコンテキスト
返答のたびに渡される会話の束をコンテキストと呼びます。最初に書いた「佐藤さん」も、毎回この束に入って読まれていました。
一方で、モデルの重みは少しも変わっていません。
伏せた名前は読まれる?
問題:同じチャットの3往復前に同僚の実名を書きました。今の質問から名前を省いて送ると、AIはその名前を読みますか。
- 読む。チャット全体がまた渡される(正解)
- 読まない。今の質問だけが渡される
- 読まない。古い発言は自動で伏せる
解説:返答のたびに、チャットの最初からの会話がまとめて渡されます。名前を隠したいなら、新しいチャットで始めるのが確実です。
新しい会話にも入るメモ
ChatGPTのメモリは、「上司は佐藤さん」といった事実をメモし、新しいチャットのコンテキストにも足す機能です。過去のチャット自体を参照する設定もあります。
○か✕か
○か✕か:新しいチャットを開けば、前のチャットで話した内容はAIに一切伝わらない。
答え:✕。メモリにメモされた情報は、新しいチャットにも加えられます。何が保存されているかは、設定のメモリ管理から確認できます。
学習は、あとで別に起きる
学習は、集めた会話でモデルの重みを作り直す工程です。個人向けChatGPTは初期設定で会話やファイルを使い、法人向けのBusinessやEnterpriseは使いません。
学習したものは取り出せる
2023年、Google DeepMindなどの研究者がChatGPTに「poem」を永遠に繰り返すよう頼むと、途中から学習データが出てきました。約200ドルの操作で1万件超、数十人分の個人情報も含まれていました。
研究から言えることは?
問題:研究者が約200ドルの操作でChatGPTから学習データを1万件以上取り出した2023年の研究から、言えることはどれでしょうか。
- 学習に使われた文は、あとで出てくることがある(正解)
- 新しく送った会話は、すぐ他人の画面に出る
- どのAIも、届いた会話をその場で学習している
解説:研究が示したのは、すでに学習に使われたデータの話です。だから「学習に使うかどうか」は、あとから取り消しにくい選択だと言えます。
AIの「記憶」の正体
- 返答のたびに、チャットの会話がまるごとコンテキストとして読み直される
- メモリは別に保存されたメモで、新しいチャットにも加わる
- 学習は後日、集めた会話で重みを作り直す工程。学習されたものは取り出されうる
病名を読ませないには?
問題:チャットの前半に家族の病名を書きました。この先、AIに病名を読ませたくないとき、一番確実なのはどれでしょうか。
- 新しいチャットで、病名を書かずに始める(正解)
- 同じチャットで、病名を省いて質問を続ける
- 同じチャットのまま、学習をオフにする
解説:同じチャットを使う限り、過去の病名は返答のたびに読み直されます。新しいチャットなら束は空から始まります。メモリや過去チャットの参照がオンなら、そこも確認しましょう。では、チャットを消すと会話は消えるのでしょうか。次は、削除ボタンの裏にある「30日」を見ます。
用語
- 学習(Training)
- 集めたデータで重みを調整し、新モデルを作る工程。会話のその場では起きません。
- 重み(Weights)
- モデル内の膨大な数値。学習で調整され知識や癖を決定。普通の会話では変わりません。
- メモリ(Memory)
- 会話から好みや事実をメモして、次の会話にも持ち込む機能。会話とは別の場所に保存されます。
- モデル(Model)
- 文を読み続きを予測するAI本体。ChatGPTはこのモデルに文を渡し返答を作ります。
- コンテキスト(Context)
- 返答を作るときにモデルへ渡す文章のまとまり。チャットのやり取りやメモリ、添付ファイルの中身などが入ります。