矛盾を見抜く:モデルチェックと推論規則

「AIの基礎:探索から機械学習まで」のレッスン 5 / 15・約6分

可能な世界を全調べるモデルチェックと、パズルのように結論を導く前件肯定や解像度規則を学ぶレッスンです。

このレッスンで学ぶこと

  • 世界を数えずに結論を出す
  • 世界を消して答えを取り出す

レッスンの内容

ハリーは、走りに行く?

「火曜日で雨が降っていなければ、ハリーは走る」。今日は火曜日で、雨はなし。

人はすぐ「走る」と答えますが、AIは答えが確実だとどう確かめるのでしょう。

本当とうその組み合わせは8通り

「火曜日」「雨」「ハリーが走る」の3つが、本当かうそか。組み合わせは2×2×2で8通りです。

この1通りずつを、ありえる世界の1つとしてモデルと呼びます。

残った世界で、結論を確かめる

8通りから、知っている3つの文と矛盾する世界を消すと、残るのは「火曜日・雨なし・走る」の1つだけ。

残った世界すべてで結論が本当なら確実です。この確かめ方をモデルチェックといいます。

「火曜日で雨なしなら、ハリーは走る」と「今日は火曜日」だけを知っていて、雨かどうかは分かりません。「ハリーは走る」は確実でしょうか。

問題:「火曜日で雨なしなら、ハリーは走る」と「今日は火曜日」だけを知っていて、雨かは分かりません。「ハリーは走る」は確実でしょうか。

  1. 確実とは言えない(正解)
  2. 確実に走ると言える
  3. 確実に走らないと言える

解説:雨の世界ではルールが働かないため、走る世界も走らない世界も残ります。走らない世界が残る以上、確実とは言えません。走る世界も残るので、走らないとも言い切れません。

犯人を、世界ごと試す

あかり・ばんり・ちひろのうち、犯人は1人、うそをついているのも1人。犯人を1人ずつ仮に決めて、証言とぶつからない世界を探してください。

1つ増えるたびに、世界は2倍

命題が1つ増えると世界は2倍に。3つで8通り、10個で1024通り、20個なら100万通り超え。

現実の知識はもっと複雑なので、全パターン調べる方法はすぐ限界を迎えます。

○か✕か

○か✕か:命題の数を3個から6個に増やすと、モデルチェックで調べる世界の数も2倍になる。

答え:✕。1つ増えるごとに2倍なので、3個増えれば2×2×2で8倍です。8通りから64通りに増えます。

2つの文から、3つ目の文を書く

「火曜日で雨なしなら走る」と「火曜日で雨なし」。この2文がそろえば、8通りを数えずに「走る」と導けます。

文の形だけで新しい文を導く手順を推論規則といい、この形は前件肯定と呼ばれます。

雨なら中止、どの札をめくる?

ルールは「片面が雨なら、裏は中止」。ルール違反を見つけるのに、めくる必要がある札を選んでください。多くの人が1枚見落とします。

「残業したら、夕食は外で食べる」と「今日は残業した」。この2文だけから確実に言える文はどれでしょう。

問題:「残業したら、夕食は外で食べる」と「今日は残業した」。この2文だけから確実に言える文はどれでしょう。

  1. 今日の夕食は外で食べる(正解)
  2. 外で食べたなら残業した日だ
  3. 残業しない日は家で食べる

解説:「PならばQ」と「P」から「Q」が出る前件肯定の形です。逆も、残業しない日のことも、この2文は言っていません。札の問題で「中止」と「晴れ」をめくらなくてよいのも同じ理由で、「開催」をめくるのは裏が雨ならルール違反になるからです。

打ち消し合って、残りが出る

「ロンは大広間にいるか、ハーマイオニーは図書館にいる」に「ロンは大広間にいない」を重ねます。

ロンの条件が打ち消し合って消え、「ハーマイオニーは図書館にいる」が残ります。

打ち消し1つで、推論が進む

残るものが2つでも同じです。「PかQ」と「PでないかR」からPを打ち消すと、「QかR」が残ります。

この打ち消しだけで推論を進める規則を導出原理と呼びます。前件肯定も、この形に書き直せます。

「会議は月曜か火曜」と「会議は月曜ではないか、部長が出る」。月曜の部分を打ち消すと、残る文はどれでしょう。

問題:「会議は月曜か火曜」と「会議は月曜ではないか、部長が出る」。月曜の部分を打ち消すと、残る文はどれでしょう。

  1. 会議は火曜か、部長が出る(正解)
  2. 会議は火曜で、部長が出る
  3. 会議は月曜で、部長が出る

解説:打ち消し合うのは「月曜」と「月曜ではない」で、残りは「か」でつながります。どちらが本当かは決まっていないので、両方成り立つとは言えません。

何も残らないのは、矛盾の合図

「ハリーは走る」と「ハリーは走らない」を打ち消し合うと、何も残りません。

この空っぽの結果は、知識の中に同時に成り立たない文が混ざっている合図です。

わざと逆を足して証明する

AIは確かめたい結論の逆、「ハリーは走らない」を知識に足して打ち消しを続けます。空っぽが出れば逆は成り立たず、「走る」は確実です。

この確かめ方を背理法といいます。8通りの世界は1つも数えていません。

○か✕か

○か✕か:結論Aを確かめるために「Aでない」を知識に足して矛盾が出たなら、Aのほうが間違っている。

答え:✕。矛盾を生んだのは足した「Aでない」です。元の知識が正しければ「Aでない」が誤りで、Aが確実になります。

世界を数えずに、確実を言う

  • 命題の本当・うその組み合わせ1通りずつがモデル。3つなら8通り
  • 知識と矛盾する世界を消し、残り全部で結論が本当なら確実。これがモデルチェック
  • 命題が1つ増えるたびに世界は2倍。だから文から文を直接導く
  • 「PかQ」と「Pでない」を打ち消し、残った文を書き出す
  • 結論の逆を足して空っぽが出れば、結論は確実

「ハリーは走る」が確実かを、8通りの世界を数えずに確かめたいとき、AIが知識に足して打ち消しを続けるのはどの文でしょう。

問題:「ハリーは走る」が確実かを、8通りの世界を数えずに確かめたいとき、AIが知識に足して打ち消しを続けるのはどの文でしょう。

  1. ハリーは走らない(正解)
  2. ハリーは走る
  3. 今日は火曜日ではない

解説:確かめたい結論の逆を足して空っぽが出れば、逆は成り立たないので「走る」は確実です。お疲れ様でした。ただ現実の知識は「雨なら必ず中止」と言い切れないものばかり。次は、病気の人の90%を見抜く検査で陽性が出ても本当に病気とは限らない理由を、1000人の村で確率を使って読み解きます。

用語

モデル(Model)
文の本当・うそを1通りに決めたもの。あり得る世界の1つ。
背理法(Proof by contradiction)
結論の逆を仮定して矛盾を導き、元の結論が正しいと証明する方法。
前件肯定(Modus ponens)
「PならばQ」と「P」から「Q」を導いてよいという推論規則。
導出原理(Resolution)
「PかQ」と「PでないかR」のように、ある文とその否定を含む2つの文から、それを打ち消して「QかR」を残す推論規則。
推論規則(Inference rule)
決まった型の文から新しい文を導くルール。世界を数えずに結論を出せます。
モデルチェック(Model checking)
あり得る世界をすべて並べ、知識と矛盾しない世界で結論が本当になるか試す方法。