量子力学の世界
「物理のすべて」のレッスン 6 / 6・約8分
1粒の電子が、2つの隙間を同時に通る?常識が通用しないミクロの世界へ。
このレッスンで学ぶこと
- 干渉と重ね合わせ
- 観測と不確定性
レッスンの内容
史上いちばん奇妙な実験
壁に細い隙間を2本あけて、奥にスクリーンを置きます。道具はこれだけです。
それなのに、この実験の結果で常識が壊れます。まずは結果が予想できるボールから試しましょう。
ボールを投げ続けたら
問題:2本の隙間に向かって、小さなボールを何千回も投げ続けます。奥のスクリーンにはどんな跡が残りますか?
- 隙間の形のまま、2本の帯ができる(正解)
- 明るい帯と暗い帯が交互に並ぶ
- スクリーン全体に均一に散らばる
解説:粒として飛ぶものは、通れた隙間の真後ろにしか行きません。だから隙間の数だけ帯ができます。ここまでは想像どおりのはずです。
波を重ねてみる
スリット間隔のスライダーを動かしてみてください。強くなる場所と消える場所がどう並び変わるかを見ます。
強め合いと、打ち消し合い
山と山で大きくなり、山と谷で消える。波が重なって強弱ができる現象が干渉です。
強め合う場所と消える場所が交互に並び、縞模様ができます。波だけの特別な現象です。
縞は何を意味する
問題:2本の隙間の奥のスクリーンに縞模様が出ました。隙間を抜けてきたものについて、何が言えますか?
- 飛んできたものが、隙間の両方を通って重なった(正解)
- 飛んできたものが、片方の隙間だけを通った
- 飛んできたものの数が、とても多かった
解説:縞は、2か所から出た波が重なったときにだけ現れます。片方だけを通ったなら、重なる相手がいないので縞にはなりません。
電子でも、縞が出た
ここからが本番です。ボールではなく、原子の中にある電子を2本の隙間へ飛ばします。
現れたのは2本の帯ではなく縞模様でした。粒のはずなのに、波のように動いています。
1粒ずつ撃っても、縞が出た

1989年、日立の外村彰らは電子を1個ずつ時間をあけて撃ちました。最初は点がぽつぽつ付くだけです。
ところが点が数万個たまると、また縞が浮かび上がりました。同時に飛ぶ相手はいないはずなのに。
相手がいないのに
問題:1粒ずつしか飛んでいないのに縞ができました。これは何を意味しますか?
- 粒どうしが、飛んでいる途中でぶつかっている
- 1粒が、両方の隙間を同時に通っている(正解)
- スクリーンの側が、勝手に縞を作っている
解説:重なるには2か所から広がる必要があります。相手がいない以上、その1粒が両方を通ったとしか言えません。ここが常識の壊れるところです。
どちらも、同時に
1粒が両方を通った。このように、いくつもの可能性が同時に重なる状態を重ね合わせといいます。
右か左か、どちらか一方には決まっていないのです。
二重スリット実験室
隙間に装置を置けば、どちらを通ったか分かるはずです。観測のスイッチを入れたり切ったりして、右端に積み上がる模様の変化を見てみましょう。
見たとたん、粒に戻る
どちらを通ったか調べたとたん、縞は消えて2本の帯に戻りました。調べるのをやめると縞に戻ります。
どちらを通ったか調べることを観測と呼びます。調べた瞬間に、結果が1つに決まるのです。
○か✕か
○か✕か:縞が消えるのは、人が意識して見つめることで結果が変わるからだ。
答え:✕。人がいなくても同じことが起きます。装置がその粒に触れて情報を取り出せば、そこで決まります。意識ではなく、どちらを通ったかが外に残るかどうかの問題です。
両方きっちりは、測れない
1927年、ハイゼンベルクは不確定性原理を示しました。粒の位置を絞るほど速さがぼやけ、速さを絞ると位置がぼやけます。
そのため原子の中の電子は、点ではなく確率の雲として描かれます。
測定器の問題ではない
問題:位置と速さを両方きっちり測れないのは、なぜですか?
- 測定器の性能が、まだ足りていないから
- そもそも両方が同時に決まっていないから(正解)
- 測るのに時間がかかりすぎるから
解説:装置を良くしても解決しません。粒はもともと決まった位置を持っておらず、決まっていないものを読み取ることはできない、という話です。
決まっていない、という答え
- 縞模様は、2か所から広がった波が重なったときにだけできる
- 1粒ずつでも縞ができる。つまりどちらも同時に通っている
- どちらか調べたとたん一方に決まり、縞は消える
- 位置と速さも両方同時には決まらず、電子は確率の雲として描かれる
総仕上げ
問題:1粒ずつ撃っても縞ができるのに、どちらを通ったか調べると縞が消えます。この2つから言えることは何ですか?
- 粒は最初から片方を通っていて、縞は別の理由で出ている
- 調べる前は決まっておらず、調べた時点で一方に決まる(正解)
- 粒は波と粒が交互に入れ替わりながら飛んでいる
解説:新幹線のジャンプから始まって、決まっていない粒まで来ました。物理は毎回、動かないと思っていたものを1つずつ手放してきたのです。おつかれさまでした。明日スマホを充電するとき、GPSで道を調べるとき、日差しを浴びるとき。その裏で動いている法則を、もう自分の言葉で説明できます。
用語
- 干渉(Interference)
- 波が重なって、強め合ったり打ち消し合ったりする現象。
- 観測(Observation)
- どうなっているか確かめること。この瞬間に可能性が1つに固まる。
- 縞模様(Interference pattern)
- 強め合う場所と消える場所が交互に並んで生まれる、明暗の帯。
- 確率の雲(Probability cloud)
- 決まった1点ではなく、どこにいそうかの広がりで粒を描いたもの。
- 重ね合わせ(Superposition)
- 複数の可能性が、1つに決まらないまま重なって並び立つ状態。
- 不確定性原理(Uncertainty principle)
- 位置と速さの両方を、同時にぴったり知ることはできない仕組み。