原子と相対性理論
「物理のすべて」のレッスン 5 / 6・約8分
時間は伸び縮みする。質量はエネルギーになる。アインシュタインが描いた驚きの宇宙。
このレッスンで学ぶこと
- 光速不変と時間の遅れ
- 質量とエネルギーの等価性
レッスンの内容
砕いていくと、何が残る
モノをどこまでも細かく砕くと、最後は原子という粒に行き着きます。
中心の重い塊のまわりを、マイナスの電気を帯びた軽い電子が飛び回っています。マイナスどうしは、近づくと押し返し合います。
ほとんど、空っぽ
中心の塊をパチンコ玉の大きさにすると、電子は東京ドームの客席あたりを飛んでいます。原子の中は、ほぼスカスカの空間です。
では、スカスカの手が机をすり抜けないのはなぜでしょう。
すり抜けない理由
問題:中身がスカスカなのに、机を叩いた手が止まるのはなぜですか?
- 原子が中身までぎっしり詰まっているから
- 手と机の外側にある粒どうしが、電気の力で反発するから(正解)
- 原子どうしが接着剤のようにくっついているから
解説:触っている感覚の正体は反発です。手と机の表面にある電子はどちらもマイナス。同じ電気どうしが押し返し合うため、本当の意味では触れていません。
アインシュタインの妙なルール
走る電車から前へ投げたボールは、ホームから見ると電車の速さが足されて速く見えます。
ところが光は違います。1905年、アインシュタインは光の速さは誰から見ても同じという事実を出発点にしました。
走る電車から照らすと
問題:走る電車の中から前へ懐中電灯を照らします。ホームに立つ人から見て、その光の速さはどうなりますか?
- 電車の速さの分だけ速くなっている
- 電車の中で測ったときとまったく同じ(正解)
- 電車の速さの分だけ遅くなっている
解説:ボールなら電車の速さが足されます。でも光だけは足し算が効かず、どちらから測っても同じ速さになります。実験でも確かめられている事実です。
足し算が通じない
速さとは、進んだ距離をかかった時間で割ったもの。電車の床から天井へ光を放つと、車内では真上に1メートルです。
ホームからは電車が進むぶん、ななめに長く見えます。それでも速さは同じなのです。
○か✕か
○か✕か:光の速さが変わらなく見えるのは、測定器の精度がまだ足りていないからだ。
答え:✕。精度を上げるほど、ぴったり同じだと分かってきました。誤差ではなく、この宇宙の仕組みそのものだと受け入れるしかなかったのです。
曲げられるものが、1つだけ残る
光の速さを変えずに距離だけが伸びるなら、割る時間も伸びるしかありません。
アインシュタインは、誰にとっても同じだと思われていた時間のほうが伸びると考えました。
光速に近づいてみる
速度を上げて開始を押してください。時計の差がどこから開くかを見ます。
最後の最後で、一気に開く
動いている側の時間がゆっくり進むことを時間の遅れといいます。差は光速の近くで一気に開くので、普段は気づけません。
それでもGPS衛星は秒速約3.9キロで飛ぶため、速さの効果だけで時計が1日に約7マイクロ秒遅れます。
帰ってきたとき
問題:双子の片方が、光速に近い速さのロケットで旅をして地球に戻りました。2人はどうなっていますか?
- 旅をした側のほうが、年を取っていない(正解)
- 地球に残った側のほうが、年を取っていない
- 2人はまったく同じだけ年を取っている
解説:動いていた側の時間がゆっくり進むので、過ごした時間自体が短くなります。精密な時計を飛行機に乗せた実験でも、ごくわずかなずれが確かめられました。
○か✕か
○か✕か:新幹線に乗っているあいだも、あなたの時間はホームの人よりほんの少しだけ遅れている。
答え:○。本当に遅れています。ただ差が小さすぎて、一生乗り続けても一瞬にも届きません。特別な世界の話ではなく、日常の速さでは見えないだけです。
重さは、たくわえだった
アインシュタインは、重さとエネルギーも同じものの姿違いだと示しました。質量とエネルギーの等価性です。
$E = mc^2$
ほんの少しで、とんでもない量
式にある $c^2$ は光の速さの2乗。1グラムの重さが全部エネルギーに変わると、約90兆ジュールになります。
太陽は毎秒約400万トンずつ軽くなりながら、そのエネルギーで輝いています。
太陽の燃料
問題:太陽が何十億年も輝き続けていられるのは、なぜですか?
- とてつもない量の燃料を、薪のように燃やしているから
- ごくわずかな重さを、けた違いのエネルギーに変えているから(正解)
- 宇宙のどこかからエネルギーを補給し続けているから
解説:太陽は毎秒ものすごいエネルギーを出していますが、減っている重さはほんのわずかです。重さがエネルギーのたくわえだからこそ、長く輝き続けられます。
常識が通じるのは、日常だけ
- 物質はほとんど空っぽで、触れた感覚の正体は反発だった
- 光の速さが誰から見ても同じなので、時間のほうが伸び縮みする
- 重さとエネルギーは同じもので、少しの重さが莫大な量になる
総仕上げ
問題:アインシュタインが「時間は伸び縮みする」と考えざるをえなかったのは、なぜですか?
- 時間を測る時計の精度に、限界があったから
- 光の速さが誰から見ても同じなら、時間のほうを動かすしかなかったから(正解)
- 重さとエネルギーが同じものだと分かったから
解説:変わらないものを1つ決めた結果、動かないはずの時間が動きました。おつかれさまでした。では、原子の中を飛ぶ電子を1個ずつ撃ち出したらどうなるでしょう。次は、たった1粒が2つの隙間を同時に通ったとしか思えない実験を見ていきます。
用語
- c^2(Speed of light, squared)
- 光速の2乗。とてつもなく巨大な数。
- 原子(Atom)
- 物を細かく砕いていった先に残る粒。中身はほぼ空っぽ。
- 電子(Electron)
- 原子の中心の周りを飛び回る、とても軽い粒。マイナスの電気を持ちます。
- E = mc^2(Mass–energy equivalence)
- エネルギーは質量に光速の2乗をかけたもの。重さとエネルギーは同等です。 - $E$ … エネルギー - $m$ … 質量 - $c$ … 光速
- 時間の遅れ(Time dilation)
- 速く動くものほど、時間の進みがゆっくりになる現象。
- 質量とエネルギーの等価性(Mass–energy equivalence)
- 重さとエネルギーは同じものの別の姿で、互いに移り変われるという考え方。