批判は、なぜ効かないのか
「人間関係のゴールデンルール」のレッスン 2 / 7・約6分
警官を撃った犯人でさえ「自分は悪くない」と書き残していました。正しい指摘が言い訳と恨みに変わる理由と、リンカーンやパイロットのフーバーが代わりにしたことが分かります。
このレッスンで学ぶこと
- 人は自分を悪いと思わない
- 責める代わりにすること
レッスンの内容
資料に、間違いを見つけた
後輩の資料に数字の間違いがありました。「何回言ったら直るの」と言うと、返ってきたのは反省ではなく「でも、締切が重なっていて」。
正しいことを言ったのに、なぜ言い訳が返ってくるのでしょう。
警官を撃った男の手紙
1931年5月、警官を撃った「二丁拳銃」クローリーは、ニューヨークのアパートで150人の警官に包囲されました。
撃ち合いの最中に彼が書いた手紙には「この上着の下には、疲れてはいるが優しい心がある」とありました。
言われた側の頭の中
問題:取引先に「また納品が遅れましたね」と言われた担当者の頭に、まっさきに浮かびやすいのはどれですか。
- 仕入れ先の出荷が遅れたという事情(正解)
- 遅れの原因になった工程
- 次から遅れを防ぐ段取り
解説:警官を撃ったクローリーでさえ、自分の心は優しいと書きました。責められた人がまず探すのは、自分のせいではないと言える事情です。
刑務所長が見た、同じ口ぐせ
ギャングのアル・カポネも、自分は人々に楽しみを与えてきたのに、責められるだけの恩人だと語りました。
シンシン刑務所の所長ルイス・ロウズも、自分を悪人だと思う受刑者はほとんどいない、とカーネギーに伝えています。
批判は、言い訳と恨みを残す
カーネギーは「批判は役に立たない」と書きます。責められた人は直すより先に自己正当化を始めるからです。資料のミスに「締切が重なって」と返す後輩も同じ。
しかも批判は重要感を傷つけ、恨みを残します。
○か✕か
○か✕か:厳しく言われたほうが人は本気で反省するので、強い言い方のほうが結局は直りやすい。
答え:✕。強く言うほど、相手は自分を守る理由を集めます。重要感を傷つけられた人に残るのは、反省ではなく恨みです。
リンカーンが、決闘しかけた日
1842年、若きリンカーンは政治家シールズを嘲笑する匿名の手紙を新聞に載せ、決闘を申し込まれます。
剣を手に向き合った決闘は直前で止められ、以後、彼は人をあざける手紙を書きませんでした。
出さなかった手紙
1863年、ゲティスバーグの戦いのあと、ミード将軍はリンカーンの攻撃命令に従わず、敵軍を逃がしました。
リンカーンは怒りの手紙を書きます。しかし送られないまま、彼の死後に書類の中から見つかりました。
送っていたら
問題:もしリンカーンが怒りの手紙をミード将軍に送っていたら、将軍はまずどうしたと考えられますか。
- 命令違反を反省して、すぐに追撃を始めた
- 自分の判断の理由を並べ、大統領を責め返した(正解)
- 大統領の指摘に感謝して、作戦を相談しに来た
解説:カーネギーは、リンカーンがこう考えて手紙をしまったと推測しています。送れば気は晴れても、ミードは自分を正当化し、大統領を非難し返すだろう、と。
罰より、ほめたほうが覚える
心理学者スキナーの実験では、良い行動をほめられた動物は、悪い行動を罰せられた動物より速く学び、長く覚えていました。
カーネギーは、人間にも同じことが言えると書いています。
燃料を入れ間違えた整備士
名パイロットのボブ・フーバーは、整備士の燃料の入れ間違いで、上空約90メートルで両エンジンが止まりました。着陸はできましたが、機体は大破します。
泣いている整備士に、彼は「明日も私の機体を整備してくれ」と頼みました。
フーバーならどう言う
問題:部下の入力ミスで、取引先に誤った請求書が届きました。フーバーのやり方に近い声のかけ方はどれですか。
- 次も請求書は任せるから、確認の手順を一緒に決めよう(正解)
- なぜ確認しなかったのか、理由を報告書にまとめてほしい
- しばらく請求書は別の人に回すから、他の仕事をしてほしい
解説:フーバーは責める代わりに、同じ仕事をまた任せました。信頼を伝えられた人は、自分を守る理由がなくなります。
正しさより先に、届き方
- 人は凶悪犯でさえ、自分は悪くないと思っている
- だから批判は、自己正当化と恨みを生むだけで、行動を変えない
- 怒りの手紙は送らず、フーバーのように信頼を伝える
直らない理由
問題:家族に「使った食器は流しに出して」と何度も正しく注意しているのに、変わりません。カーネギーの考えで、いちばんの原因はどれですか。
- 注意されるたびに、相手がまず自分を守る理由を探すから(正解)
- 注意の回数がまだ少なく、習慣として身についていないから
- 注意の中身があいまいで、何を直すかが伝わっていないから
解説:中身が正しくても、責められた人はまず自分を正当化し、恨みまで残します。おつかれさまでした。では、責めずにほめればいいのでしょうか。カーネギーは、ほめ言葉とお世辞をはっきり分けています。次は、年俸100万ドルで雇われた男のほめ方から、その違いを見ます。
用語
- 重要感(Feeling of importance)
- 自分は価値ある存在だと思いたい感情。批判されると傷つき恨みが残ります。
- 自己正当化(Self-justification)
- 自分の行動には理由があったと周りに説明すること。本人は言い訳だと思っていません。