起業するか、自信より先に数えるもの
「シリコンバレー式起業メソッド」のレッスン 2 / 11・約6分
行列のできるパン屋は、なぜスタートアップと呼ばれないのか。向き不向きを自信や経歴ではなく、失敗したら何を失うかで決める方法を学びます。
このレッスンで学ぶこと
- 始めるかどうかは、失うものを数えて決める
レッスンの内容
行列のできるパン屋
駅前で毎朝行列ができ、昼には完売するパン屋があります。経営も順調です。
でも、この店をスタートアップと呼ぶ人はいません。一体何が違うのでしょう。
決め手は、増え方
Y Combinator創業者ポール・グレアムは、スタートアップを急成長するよう設計された会社と定義します。
必要なのは、多くの人が欲しがるものと全員に届ける手段。パン屋には後者がありません。
○か✕か
○か✕か:新しい技術を使っている会社なら、それはスタートアップだ。
答え:✕。技術は決め手ではありません。届く相手が限られていればスタートアップとは言えないのです。
スタートアップと呼べるのは
問題:グレアムの定義で、スタートアップと呼べるのはどれでしょう。
- 毎朝行列ができて売り切れる、駅前の人気パン屋
- 全国の小さな店が、ネットで予約を受けられる仕組み(正解)
- 最新のAIを取り入れた、自社だけで使う日報ツール
解説:多くの人が望むものと、全員に届ける手段。この2つが揃うのは、全国の店に届く予約システムです。
急成長を、どう測るか
急成長は成長率で測ります。グレアムによれば、支援期間中に週5〜7%増えれば順調で、週10%なら例外的です。
週1%なら、まだ何かが分かっていないサインです。
週1%の伸び
問題:あるサービスのユーザーが、毎週1%ずつ増えています。グレアムの物差しで見ると、どういう状態でしょう。
- 少しでも増えているので、順調に伸びている
- まだ何かが分かっていない、という合図(正解)
- 例外的と言えるほど、速く伸びている
解説:週1%は、グレアムが「まだ何かが分かっていない」とする伸びです。減っていないかではなく、増えるペースで判断します。
向いているのは、どんな人
Y Combinatorのハージ・タガーは約1000人の創業者を見てきましたが、学歴や職歴は予想外に当てになりませんでした。
差がついたのは断られても立ち上がるしぶとさです。
○か✕か
○か✕か:自信がありそうに見える人なら、しぶとさも備えている。
答え:✕。タガーによると、最初は静かで自信がなさそうな創業者が、誰よりもしぶとかった例もあります。見た目の自信と粘り強さは別物です。
売上ゼロの2年間
Benchlingは、物静かなエンジニア2人の会社です。Y Combinatorを出て1年たっても、売上はゼロでした。
初売上は約2年後。2021年には評価額61億ドルで資金調達しています。
動機は、何でもいい
始めるきっかけは、お金でも好奇心でもいいとタガーは言います。
ただ、長く続ける支えになるのは問題への興味と、一緒に働く仲間を好きなことです。
長く続く動機
問題:タガーによると、始めたあとに長く支えになりやすい動機はどれでしょう。
- 早くお金を稼ぎたいという気持ち
- 解こうとしている問題そのものへの興味(正解)
- 周りから認められたいという気持ち
解説:お金目当てで始めても問題ありません。ただ長続きする原動力は、課題への興味と仲間への愛着でした。
向き不向きより、失うもの
タガーが勧める問いは「始めて失敗したら、何を失うか」。有望かどうか分かるまで、最低1年はかかります。
最悪の場合は、給料なしの1年のあとで会社を閉じることです。
同じ1年でも、重さが違う
新卒なら、その1年は大きな遠回りになりません。辞退した内定先も、1年後にまだ残っているはずです。
でも大企業で昇進目前なら、同じ1年で失うリスクは遥かに大きくなります。
判断の材料
問題:起業するかどうか迷ったとき、タガーの考えでいちばん判断の材料になるのは?
- 自分に、起業家らしい自信があるか
- 1年やって失敗したら、何を失うか(正解)
- 有名な創業者と、経歴が似ているか
解説:自信や経歴では向き不向きは測れません。失うものなら、自分の置かれた状況から具体的に計算できます。
始めるかを、決める順番
- スタートアップは急成長するよう設計された会社。伸び率に着目する
- 向き不向きは自信や経歴ではわからない。必要なのはしぶとさ
- 判断のカギは1年やって失敗したら何を失うか。今夜ノートに3行で書いてみる
友人への助言
問題:友人が「自分が起業に向いているか分からない」と迷っています。いちばん役に立つ助言は?
- 自信がつくまで、もう少し待ったほうがいい
- 1年やって失敗したら何を失うか、数えてみよう(正解)
- 良い経歴を積んでから、始めたほうがいい
解説:おつかれさまでした。向き不向きは、自信や経歴では分かりません。失うものを数えると、それが判断の材料になります。では始めると決めたとき、良いアイデアはどこから来るのか。次は、Y Combinatorの特に成功した会社の約半分がたどった「いちばん当たる探し方」を見ます。
用語
- 成長率(Growth rate)
- 1週間の伸び率。数より増加の比率を見る。
- スタートアップ(Startup)
- 急成長する設計の会社。技術ではなく広く届くかで決まる。