AIエージェントと普通のAI、境目は1本だけ

「AIエージェントの作り方」のレッスン 2 / 8・約6分

同じAIに同じ仕事を頼んでも、頼み方しだいで「エージェント」になります。賢さでも記憶でもない、たった1本の境目を見分けられるようになります。

このレッスンで学ぶこと

  • 境目は「次の一手を誰が決めるか」
  • エージェントが回すループ
  • チャットAIとの違い

レッスンの内容

同じ仕事を、二通りで頼む

新人に請求書の整理を頼むとき、頼み方は二通り。金額を抜く、表に入れる、上長に回す、と手順を全部渡す方法。

もう一つは「今月中に整理して」とゴールだけ渡し、やり方は任せる方法です。

頼み方を切り替えてみる

AIへの依頼文を「手順つき」と「ゴールだけ」で切り替えて、AIの通る道がどう分かれるかを見てみましょう。

枝分かれの正体

Anthropicは2024年12月の記事で、通る道をコードで決めた仕組みをワークフローと呼びました。

AIが自分でやり方や道具を選び、進路を変える仕組みがエージェントです。

○か✕か

○か✕か:ワークフローでも、一つひとつの作業そのものはAIがやっている。

答え:○。人が決めるのは順番です。要約や抽出といった作業はAIが担当します。手順を決めてもAIの出番は減りません。

境目は、賢さではない

二つの頼み方の差は、AIが急に賢くなって生まれたのではありません。同じ大規模言語モデルのままです。

違うのは次の一手を誰が決めるかだけです。

○か✕か

○か✕か:より賢い最新のAIに切り替えれば、それだけでエージェントになる。

答え:✕。賢いモデルは作業の精度を上げますが、次に何をするかまでは決めません。手順を人間がすべて決めているなら、どれだけ賢くても決まったルートを進むだけです。

エージェントはどれ?

問題:次の3つのうち、エージェントと呼べるのはどれでしょう。

  1. 届いたメールを毎回同じ形式で要約して、決めたフォルダに保存する
  2. 問い合わせの内容を読んで、調べ先を選び直しながら答えにたどり着く(正解)
  3. 長い文章を読み込ませて、指定した語句をすべて言い換える

解説:残りの2つは、やる順番が最初から決まっています。問い合わせの例だけが、調べた結果に応じて次にどこを検索するかを自分で決めています。

決めるって、何をしている?

エージェントはループを回します。次の一手を決め、道具を使い、結果を見てまた決める。

Anthropicは、この結果という手応えを毎回受け取るのが肝心だと書いています。

いつものチャットは、どっち?

ChatGPTに質問し、答えを読み、次を考える。いつものチャットはこの往復です。

答えが出たらAIは止まり、次の一手を決めるのはあなたです。

手順書を書いているのは、あなた

毎回あなたが次を決めるなら、形はワークフローに近いもの。手順書が頭の中にあるだけです。

だから疲れますし、席を離れると止まります。

手を離した瞬間に変わる

Claude Codeに「このテストが通るように直して」とだけ頼むと、AIがファイルを探し、書き換え、テストを走らせます。

失敗したら結果を読んで直し、通るまで続けます。渡した自律性の分だけエージェントになります。

どこで変わる?

問題:いつものチャットAIが、エージェントに近づくのはどんなときでしょう。

  1. 一手ずつ指示するのをやめて、目的だけ伝えて任せたとき(正解)
  2. 質問文を、もっと詳しく丁寧に書き直したとき
  3. 会話が長く続いて、前のやり取りを覚えているとき

解説:次を決める役がAIへ移ると、呼び名が変わります。質問が上達しても記憶が増えても、次を選ぶのが人なら形は同じです。

ペアを見つけよう

この四つが分かれば、AIシステムの図の多くが読めるようになります。

境目は一本だけ

  • 同じ仕事でも、頼み方は手順つきとゴールだけの二通りある
  • 手順を人が決めればワークフロー、AIがその場で決めればエージェント
  • エージェントは、決める・やる・結果を見る、を繰り返して進む

どちらがエージェント?

問題:同じClaudeで2つの仕組みを作りました。A:毎朝メールを要約して保存する。B:失敗したテストを読み、直す場所を選び直す。エージェントはどちらでしょう。

  1. Bの、テストを読んで直す場所を選び直す仕組み(正解)
  2. Aの、毎朝メールを要約して保存する仕組み
  3. どちらも同じClaudeなので、両方ともエージェント

解説:Aは毎朝同じ順番をたどるだけ。Bは結果を見て、次の一手をAIがその場で決めています。境目は賢さではなく、次の一手を決める役がどちらにあるかです。おつかれさまでした。ただ、判断をAIに委ねるほど、待ち時間や費用は増えます。それでもAIに決めさせるべき仕事とは何か。次は、Anthropicが数十のチームと仕事をして導き出した答えを見ていきましょう。

用語

ループ(Loop)
決める、実行する、結果を見る、を完了するまで繰り返すこと。
自律性(Autonomy)
AIが自分で決めていい広さ。渡すほど動きは読みにくくなります。
エージェント(Agent)
ゴールだけ渡され、次に行うことや使うツールをAI自身が決めながら進む形。
ワークフロー(Workflow)
進む順番を人間が先に決めておき、AIには作業だけを任せる形。
大規模言語モデル(Large Language Model)
文章を受け取って文章を返すAI。ChatGPTやClaudeの中身で、実際の作業を担当する。