道をふさぐと、黒が現れる

「量子物理学入門」のレッスン 2 / 10・約6分

電子が通るかもしれない道を1本ふさぐと、それまで1個も出なかった黒い電子が出てきます。「両方の道を通った」でも説明できない理由を追います。

このレッスンで学ぶこと

  • 2本の道の実験と重ね合わせ

レッスンの内容

白い電子を、2本の道へ

色の箱で白と確かめた電子も、硬さの箱を通してから色を調べると、白黒半々に分かれます。

今回は、硬さの箱で分けた2本の道を鏡で合流させます。鏡は向きを変えるだけで、色も硬さも変えません。

出口の色を予想する

問題:硬さの箱で2本に分けて合流させる装置に、白い電子を1個ずつ流して出口で色を調べます。電子がどちらか1本の道を通ると考えると、出口の色はどうなるでしょう。

  1. 白と黒がほぼ半々になる(正解)
  2. 白が多く、黒は少しになる
  3. ほぼすべてが白のままになる

解説:どちらの道を通っても白黒半々になるはずです。合わせても半々。講義室の学生もそう予想しました。

結果は、すべて白

合流した出口で色を調べると、出た電子はすべて白。黒はゼロでした。

硬さの箱を通ったのに、色は半々に戻りません。

道をふさぐ壁

柔らかい道に壁を置くと電子は止まります。

MITのアダムズ教授は、道の長さは1000万キロでもいいと言います。硬い道の電子に遠くの壁は無関係なはずです。

壁を置いたら、どうなる?

問題:2本の道のうち柔らかい道に壁を置き、白い電子を流します。壁に当たった電子は止まります。硬い道の電子に遠くの壁は関係ない、と考えると、合流した出口はどうなるでしょう。

  1. 届く数が半分になり、すべて白(正解)
  2. 届く数は変わらず、すべて白
  3. 届く数は変わらず、白黒半々

解説:半分の電子は柔らかい道の壁で止まります。硬い道を通った残りは、壁がないときと同じく、すべて白で出てくるはず。直感的には、これが一番自然な予想ですよね。

壁を置いて、流してみる

左は両方を開けたまま、右は柔らかい道に壁を置きました。白い電子が1個ずつ流れます。黒の受け皿を見比べてみてください。

壁を置いたら、黒が出た

柔らかい道をふさぐと、届く数は半分に。しかも壁なしでは1個も出なかった黒が、届いた電子の半分を占めました。

硬い道をふさいでも同様です。もう一方を通ったはずの電子の色が変わりました。

黒はいくつ出る?

問題:硬さで2本に分かれる道のうち、柔らかい道に壁を置き、白い電子を100個流しました。合流した出口で黒になるのは、およそ何個でしょう。

  1. およそ25個(正解)
  2. 0個
  3. およそ50個

解説:100個のうち約50個は壁で止まります。届いた約50個が白黒半々に分かれるので、黒はおよそ25個です。1個ずつの動きはばらばらでも、数が増えるとこの割合に近づきます。

どの道を通ったのか

壁がないとき、すべて白で出る電子はどこを通ったのでしょう。

「硬い道だけ」なら柔らかい道をふさいだ時と同じく黒が混ざるはず。硬い道だけではありません。

柔らかい道だけ?

問題:硬さで2本に分かれる道を両方開けて白い電子を流すと、出口ではすべて白になります。この電子が柔らかい道だけを通った、とは言えないのはなぜでしょう。

  1. 硬い道をふさぐと、届く電子が白黒半々になるから(正解)
  2. 柔らかい道を通ると、鏡で色が変わってしまうから
  3. 硬い道をふさいでも、届く電子はすべて白だから

解説:硬い道をふさぐと届くのは柔らかい道を通る電子で白黒半々でした。それだけを通るなら壁なしでも半々になるはずで、すべて白とは合いません。

両方でも、どちらでもない

「2つに割れて両方を通った」? 両方の道に検出器を置くと、見つかるのはいつも片方に1個まるごとです。

「どちらも通らない」? 両方の道をふさぐと、出口には何も出てきません。

5番目のあり方

4つの候補はすべて実験で消えました。電子は日常の言葉にない5番目のあり方をしていて、これを重ね合わせと呼びます。

アダムズ教授いわく、今のところこの名前は「何が起きているか分からない」の暗号です。

重ね合わせは、半分ずつ?

○か✕か

○か✕か:重ね合わせとは、電子が2つに割れて、半分ずつ両方の道を通っているあり方のことだ。

答え:✕。両方の道に検出器を置くと、見つかるのはいつも片方の道に1個まるごとの電子で、割れた電子は見つかっていません。重ね合わせは、両方でもない、5番目のあり方につけた名前です。

壁は、片方を消す

重ね合わせの電子も、壁を置くか測定すれば一方に決まります。

両方が開く時だけ、重ね合わせのまま合流してすべて白になるのです。

2本の道で分かったこと

  • 白い電子を硬さで2本の道に分け、合流させて色を調べると、すべて白
  • 片方の道をふさぐと、届く電子は半分になり、色は白黒半々に分かれる
  • 硬い道だけ、柔らかい道だけ、両方、どちらでもない、の4つは実験で否定される
  • 残った5番目のあり方が重ね合わせ。測定されると、硬いか柔らかいかの一方に出てくる

総仕上げ

問題:硬さで2本に分かれ合流する道に白い電子を流すと、両方開けるとすべて白、片方をふさぐと黒が出ます。言えることはどれでしょう。

  1. 4つの候補のどれでもない通り方をしている(正解)
  2. 1本だけを通っているが、どちらかは分からない
  3. 2つに分かれ、両方の道を半分ずつ通っている

解説:お疲れさまでした。1本だけでもなく、半分に割れたのでもない。この状態が重ね合わせです。次は光です。赤い光はどれだけ明るくしても金属から電子を出せないのに、ごく暗い紫の光なら出せます。100年前の物理学者を悩ませたこの謎から、光の正体に迫ります。

用語

測定(Measurement)
装置を粒に触れさせ、性質の答えを1つ引き出すことです。
検出器(Detector)
電子が届くと反応し、1個来たことを記録する装置です。
色の箱(Color box)
電子を色で分ける箱。出口は「白」「黒」の2つに分かれます。
硬さの箱(Hardness box)
電子を硬さで分ける箱。「硬い」「柔らかい」の出口があります。
重ね合わせ(Superposition)
『こちらだけ』『あちらだけ』『両方に割れて』『どちらでもない』のどれでもない、粒のあり方。測定すると、どちらか一方の答えとして出てくる。